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東京高等裁判所 平成10年(行ケ)206号 判決

東京都港区南青山4丁目1番12号

原告

株式会社ヴァンドームヤマダ

代表者代表取締役

山田伸子

訴訟代理人弁護士

森田健二

藤重由美子

山田明文

岩永達也

山中雅雄

吉原朋成

フランス国

パリ リュ エフ アペル 21700 ニュイーサンージョルジュ

被告

ラボラトーレ ヴェンドム ソシエテ アノニム

代表者

マルセル エリアス

訴訟代理人弁護士

宇井正一

同弁理士

勝部哲雄

田島壽

主文

特許庁が、平成8年審判第1135号事件について、平成10年5月8日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決に対する上告のための付加期間を30日と定める。

事実及び理由

第1  原告の求めた判決

主文と同旨

第2  原告の主張

1  特許庁における手続の経緯

原告は、「VENDOME」の欧文字及び「ヴァンドーム」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなり、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」(平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令の区分による。)を指定商品とする登録第2348402号商標(平成元年5月2日登録出願、平成3年10月30日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

被告は、平成8年2月5日、原告を被請求人として、本件商標の指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」について、その登録取消しの審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成8年審判第1135号事件として審理したうえ、平成10年5月8日、「登録第2348402号商標の指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」についてはその登録は、取り消す。」との審決をし、その謄本は、同年6月8日、原告に送達された。

2  審決の理由

審決は、別添審決書写し記載のとおり、被請求人(本訴原告)が、本件審判の請求の登録(平成8年2月27日)前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」について使用していたものとは認め難いので、商標法50条(平成3年法律第65号による改正前のもの)の規定により、本件商標の指定商品中当該商品についての登録を取り消すべきものであるとした。

第3  原告主張の取消事由の要点

審決は、本件商標がその指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」について使用していたものとは認め難いと誤って判断しているので、違法として取り消されるべきである。

1  原告は、平成5年3月1日以降、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を付して、本件商標め指定商品中「せっけん類」に属する商品である合成洗剤(以下「本件使用商品」という。)を販売店舗に讓渡し、又は販売店舗において本件使用商品を譲渡するか若しくはその包装に使用商標を付して譲渡することにより、本件商標を継続的に使用している。

2  したがって、審決が、「被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品について使用していたものとは認め難い。」(審決書5頁18~21行)と認定したことは誤りである。

第4  当裁判所の判断

1  被告は、適法な呼出しを受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。

したがって、被告は、前示第2原告の主張1及び2の各事実と、前示第3原告主張の取消事由の要点の1の事実を、いずれも明らかに争わないものとして、これらを自白したものとみなす。

そうすると、原告は、本件審判の請求の登録(平成8年2月27日)前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品中「せっけん類」について使用していたものと認められるから、これに反する審決の前記判断(審決書5頁18~21行)は誤りであり、本件商標の不使用を理由として、その指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」についての登録を取り消すとした審決は、取消しを免れない。

2  よって、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担及び付加期間の指定にっき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、96条2項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成8年審判第1135号

審決

フランス国、バリ 75010-リュ ドゥ ハウテヴィレ 60-

請求人 ラボラトーレ ヴェンドム ソシエテ アノニム東京都港区虎ノ門3丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所

代理人弁理士 石田敬

東京都港区虎ノ門3丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所

代理人弁理士 字井正一

束京都港区虎ノ門3丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所

代理人弁理士 勝部哲雄

東京都港区虎ノ門3丁目5番1号 虎ノ門37森ビル 青和特許法律事務所

代理人弁理士 田島壽

東京都港区南青山4丁目1番12号

被請求人 株式会社 ヴァンドームヤマダ

東京都港区赤坂1丁目1番14号 溜池東急ビル 真田国際特許事務所

代理人弁理士 真田雄造

上記当事者間の登録第2348402号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

登録第2348402号商標の指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」についてはその登録は、取り消す。

審判費用は、被請求人の負担とする.

理由

1.本件登録第2348402号商標(以下「本件商標」という。)は、「VENDOME」と「ヴァンドーム」の各文字を2段に横書きしてなり、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成1年5月2日登録出願、同3年10月30日に登録され、現に有効に存続しているものである。

2.請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その理由を概略次のように述べている。

(1) 本件商標は、商標権者により継続して3年以上、日本国内において指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」に使用されていないし、また、本件商標の商標権には、専用使用権は設定されておらず、加えて、通常使用権も登録されていないことから、本件商標権の通常使用権者も存在しないことが推認される。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消しを免れない。

(2) なお、請求人の登録出願に係る商願平5-122859号に対して、本件商標を引用した拒絶理由通知を受けているから、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有する。

3.被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を概略次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証(枝番を含む。)を提出している。

(1) 被請求人は、本件商標と社会通念上同一のものと容易に理解される乙第号証に示す商標(以下「使用商標」という。)を、その取消請求に係る指定商品中の「せっけん類」に属する商品である「合成洗剤」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において使用しており、本件商標は、その登録が取り消されるべきものではなく、その理由を以下に立証する。

(2) 本件商標の構成については、乙第1号証で明らかなところであって、これより「ヴァンドーム」の称呼を生ずるものである。

他方、乙第2号証の1に示す使用商標は、濃い青地に金色で「VENDOME」の文字は大きく、「AOYAMA」の文字はごく小さく上下2段に横書きして表された構成であることから、両文字は分離して看取され「VENDOME」の文字部分に注目し、これより生ずる「ヴァンドーム」の称呼、観念をもって実際の取引に資されているものである。

してみると、本件商標と使用商標とは、「VENDOME」の欧文字部分を同一にするものであって、これより生ずる「ヴァンドーム」の称呼をも同一にするものであるから、使用商標は、社会通念上、本件商標と同一のものと容易に理解される商標といえるものである。

(3) 請求人は、「本件商標は、商標権者により継続して3年以上、日本国内において指定商品中『せっけん類、歯みがき、化粧品』に使用されていない」等と主張し、これに対し、被請求人は冒頭にて反論した如く、この主張は全く事実に反するものである。

即ち、本件審判請求の予告登録は、本件商標の登録原簿(乙第1号証)から明らかなように、平成8年2月5日になされているが、被請求人は、その請求の登録前3年以内の平成5年2月5日から、該審判請求までの間に、その指定商品中「せっけん類」に属し、金属一般、貴金属の製品の汚れ、酸化物、赤さび、青さび落しの洗剤である「液体弱酸性合成洗剤」に付して使用しており、この事実は乙第2号証の1により明らかであり、また、乙第2号証の2は、該「液体弱酸性合成洗剤」の包装用箱の裏面であって、その商品の使用方法及び被請求人の商号が印刷してある。

(4) 被請求人は、以上述べるように使用商標を継続して使用しており、その事実は提出の証拠により明らかであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものではない。

4.よって判断するに、被請求人は、本件商標の使用事実を証明するための証拠として、「液体弱酸性合成洗剤」に関する写真を乙第2号証の1及び乙第2号証の2として提出している。

しかしながら、当該写真には、その撮影年月日、撮影場所及び撮影者等が何ら明示されていないことから、該写真のみでは、被請求人が主張する如く、本件商標が、本件審判の請求の登録前3年以内の、平成5年2月5日から本件審判請求までの間に、その指定商品中「せっけん類」に属する「液体弱酸性合成洗剤」について使用されていたことを証明するものではない。

してみれば、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標をその指定商品について使用していたものとは認め難い。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「せっけん類、歯みがき、化粧品」についての登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

平成10年5月8日

審判長 特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

特許庁審判官 (略)

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